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小説『インフルエンス』感想

宮近くん、ドラマ『インフルエンス』への出演おめでとうございます。ということで、原作である小説の感想を書いていきます。
ネタバレ注意です。

 

 

 

原作 

インフルエンス (文春文庫)

インフルエンス (文春文庫)

 

原作は、近藤史恵さんによる小説『インフルエンス』。単行本と文庫本が発売されています。2021年3月20日よりWOWOWで連続ドラマがスタートします。主演は橋本環奈さん。

www.wowow.co.jp

 

 

 

 

 

原作の内容(ネタバレ)

主要人物は、戸塚友梨、坂崎真帆 、日野里子の3人。30年以上にわたる関係性についての物語です。
中学校時代の舞台となるのは、公立中学校で校内暴力が問題となった1970年代後半から1980年代あたりと思われます。「昭和56年警察白書」の第5章*1などに当時の様子が描かれています。
3人を結び付けたのは3つの殺人です。1つ目の事件は中2の冬、2つ目の事件は高1の夏、3つ目の事件は34歳頃に起こしています。ドラマ公式サイトのイントロダクションによると高校時代に2つ事件を起こし、「20代となった彼女たちは、さらに恐ろしい殺人計画を立てる」とあるので3つ目の事件を20代で実行するのかもしれませんね。そう考えると、ドラマでは3つの殺人を起こすところまで、橋本環奈さん、葵わかなさん、吉川愛さんで演じ続けるのかもしれません。
1つ目の事件を3人で共有してしまった瞬間から、たとえどれほど時が経とうとも3人は互いを忘れることがありませんでした。友梨にとって、自分の人生がどうなろうが、他2人が優先され、そして人生を支配する2人であったのだと思います。私には友情や絆といったものは感じとれませんでした。
1つ目の事件は偶発的で、複雑化したのは日野里子の行動によるもの、2つ目の事件は自他の境目があいまいになった結果のように感じましたが、3つ目の事件は淡々と葛藤もなく実行されるため異質さがありました。2つ目と3つ目の事件を起こす約18年の間に葛藤を終えた、とも言えます。
ドラマで気になるのは、夏目俊哉が重要人物になりそうな点です。原作の友梨は夏目に惹かれるわけではないので(正確に言うと惹かれ始めていることを自覚していない)、ドラマでは愛憎入り混じった展開に変わっていくのでしょうか。より悲劇的になりそうな予感…。

 

 

 

 

 

原作の"緒方"歩(ネタバレ)

今回、宮近くんは「緒方歩」役を演じます。原作の「細尾歩」という人物に該当すると思われます。おそらく、細かな設定の違いによりドラマでは「緒方歩」と名前を変更しているのではないでしょうか。

原作における「細尾歩」は、
・友梨、真帆、里子と同じ公立中学で、同い年
・中学校時代から里子と交際
・校内でたびたび暴力沙汰を起こす
・中学2年時、遊び半分に同級生を殺害し少年院へ
・19歳頃にはすでに少年院を出ており、里子と行動を共にする
・34歳頃にはすでに里子と結婚している
・里子は細尾からDVを受けていた

現時点で解禁されている「緒方歩」の情報は、
・友梨、真帆、里子と同じ高校で、一学年上
・高校時代から里子と交際
・友梨の同級生に重傷を負わせ少年院へ

中学校時代と高校時代を置き換えるのかもしれないですね。「緒方歩」を一学年上に設定した理由も気になります。
「細尾歩」の原作上のセリフは多分1回くらい。登場シーン自体は少ないですが、端々に名前のみ登場し、最後のキーパーソンにもなります。物語に暗い影を落とす人物でありながら、人となりは謎に包まれています。人物像の輪郭が見えず、余白が多い気がします。なので宮近くんが「監督やスタッフさんと共に緒方を作っていけたら」とコメントしているのは本当に言葉の通りなんだと思います。
「細尾歩」の人物像がよりいっそう分からなくなったシーンが、2つあります。
1つ目は、ディズニーランド内のオフィシャルホテルで再会したシーン。細尾は里子とディズニーランドに行く、という大衆性を持ち合わせています。幸せの象徴のような場所で、友梨と里子を再会させるという作者の意図があったとも考えられますが…。
2つ目は、里子と長い間共にいたこと。倫理観が破綻しているように見受けられますが、(言葉が悪いですが)相手を取っ替え引っ替えするタイプではない、ということが意外でした。「歩とわたしは同じようなタイプの人間だし」と19歳頃の里子は表していましたが、似ているものがあるというだけでずっと関係が続くとは思えません。あえて籍も入れているようですし。私は、愛情や執着で、細尾が里子を選んだのだと思います。

natalie.mu

 

 

 

 


まとめ

宮近くんがどう演じるのか、とても楽しみです。解禁した写真からは、ただの手に負えないクズの不良ではなく、どこか品があるような感じがします。立ち振る舞いに己の美学がありそう。宮近くん自身の外見がそう感じさせるのですが、それが「緒方歩」像にも生きてくるのか。ドラマではどこまで「緒方歩」を掘り下げるのか、深く掘り下げずにあえて無機質な人物として登場させるのか。3月20日を待ちます!